世界経済の現状と展望


2022年になって世界的なインフレが進行しており、日本以外の多くの国では政策金利を引き上げてインフレ抑制に動いている。そしてこの傾向は今後1~2年は続くことも考えられる。

コロナの影響で世界的なインフレに

2010年代は日本を初め多くの国で低いインフレ率が続いてきた。しかし2020年になってコロナ禍が始まり、各国中銀は史上最大の規模で金融緩和を開始。それと同時にコロナ禍のために製品や原料の供給が滞るようになり、労働力の確保も以前より難しくなった。これらの理由から、2021年から多くの国で急激なインフレになる。

当初は「インフレは一時的なもの」と見る政策担当者も多かったのだが、なかなか収まらないために2022年になるとアメリカなど多くの国が利上げを開始。日本だけは異次元緩和政策をまだ続けているため日本と海外の金利差が開き、今年になってかなり円安になった。

商品先物価格も高騰

また各国の緩和のために2020年秋頃から商品先物価格も高騰しており、今年2月末に始まったウクライナ紛争はその傾向に拍車をかけた。

商品先物価格の推移はeasymarkets.comなどいろいろなサイトで見られるが、原油価格はウクライナ紛争開始の3月上旬には130ドルまで高騰した。穀物銘柄の小麦は、同じ時期に13.5ドルまで上昇して2008年につけたそれまでの最高値を更新した。

NY市場の天然ガス価格は6月と8月に9.6ドルと2008年以来の高値まで上昇。ヨーロッパ市場の天然ガスは8月下旬現在で過去最高値をつけている。これら商品先物価格の高騰も、インフレ圧力となっている。

今後インフレ緩和なるか?

しかし夏になってようやく商品先物価格も下げが見えてきている。原油価格は3月につけた130ドルが当面の天井となり、その後は下げが続き8月には85ドルに接近した。

小麦価格も同様に3月上旬につけた値が天井となり、その後は国際社会がウクライナ産穀物の輸出再開に向けて動いたことなどから下げが継続。8月には紛争開始前の7ドル台に戻っている。

夏になってようやく少しだけインフレ緩和の兆しが見えてきたが、今後どうなるかはわからない。インフレが下がらなければ、各国の利上げはまだ続くだろう。

世界的な不況入りリスクも

アメリカを初め多くの国が利上げをしているため、景気が後退し不況入りするリスクに直面している。さらに中国も春に行ったロックダウンで景気が減速しており、それに加えて不動産バブルの崩壊で経済全体が落ち込む懸念が高まっている。

アメリカや中国など超大国が不況入りすれば、世界的な不況入りのリスクが高まる。そしてそのシナリオはだんだんと現実味を帯びてきている。

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